試験にも実践にも役立つ認知行動療法(CBT)まとめ
こんにちは。乳くさいぱんだです🐼
認知行動療法(CBT)に関してまとめていきます
☆認知行動療法(以下、CBT)はモデルとしてはシンプルで本を読めば理論は分かる!
でもでも、実際の場面での応用は慣れないと難しい!
なので具体例を交えて書いていきます
電車内とかでの勉強の足しになれば幸いです
ーCBTの歴史ー
認知療法は,1990年代には,「行動療法」と合体して「認知行動療法」と呼ばれるようになり,技法の幅が広がってきました.認知行動療法は,はじめは,うつ病に対する治療法として確立されました.その後,パニック症・強迫性症・パニック症などの不安症や,発達障害,摂食障害,統合失調症の症状(幻覚や妄想),パーソナリティ障害にも適用されるようになってきました.近年では,認知行動療法はがん,高血圧症,肥満症,糖尿病や過敏性腸症候群などの身体疾患や,不眠や慢性疼痛に対しても活用されるようになってきています.認知行動療法は,うつ病と不安症に対する有効性が科学的手法にて確かめられています.また,発達障害,摂食障害,統合失調症の症状やパーソナリティ障害などに対する認知行動療法の効果もいくつもの臨床試験を通して実証されてきています.
1960年代に、二人の臨床家が相次いで発表した「認知の内容が行動に影響する」ことを核とする心理療法(A,エリス「論理情動療法」、A.ベック「認知療法」)が上記の傾向を更に促進した。 二人は,共に精神分析の臨床家であったが、クライアントの無意識にある過去由来の機制とは別に、クライアントの意識の届き易い現在の考え方における偏向(エリス{irrational belief})、 ベック{autonomous thought})が 不安症状やうつ病持続に関与するとして、認知の再構成を治療の軸とした。 理論的には、一般意味論や認知心理学(情報処理理論)を根拠とするほか、対処法としてレーヴィンソンらの行動活性化療法を取り入れたり、独自の行動分析の体裁を整えるなど、行動療法の形態に接近した。 先行していた他の行動療法においても「認知再構成法」を導入する傾向が強まり、1970年代以降、認知再構成を含む行動療法を狭義の認知行動療法とする動向が強まった。 同時期に、認知的期待(自己効力感)によって「外的条件付けなしに学習が成立する」社会的学習(バンデューラ)や、「新しい行動を言語を付随することで獲得する」自己教示法(マイケンバウム)なども提唱され、認知行動療法は多様性を増した。
・アーロン・ベックの認知療法
・アルバート・エリスの論理情動療法
この二つは試験によく出ますよね
ーCBT基本モデルー
1. 心のダンジョン探索 はじめの町
a.個人間・社会的相互作用とb.個人内相互作用の両方の中身を見ていく!
何か不快に感じる出来事があった時などに1と2を整理していきます。1と2はそれぞれ相互作用が働いていて切り離すことはできません
a.まずは自分の置かれている状況や出来事・関係のある他者を整理
b.自分の中に生じている、認知・行動・心・身体の状態の整理
【他者・環境】
↕ “個人間・社会的相互作用”
【個人】➀認知↔②行動↔③気分↔④身体 “個人内相互作用”
☆人の体験を徹底的にモデルで捉える!!
☆人によっては➀~④でどこに意識を向けるかの割合が違う!
私は認知に支配されがちで、あれこれ考えてムダな時間を使いがち
具体例1)
ロマンスがありあまる(好きな人に他に好きな人がいた場合)
【個人間相互作用・状況】
好きな人に話しかけたら真顔で冷たかった。好きな人には他に好きな人がいる
↕
【個人内相互作用】
➀認知
悲しすぎる!うー、、、どうすれば振り向いてくれる?機嫌悪いのかな?あ れ?もしかして嫌われてる?そういえば夜寝る前にカップラーメン食べる人嫌いって言ってたな。あれ?昨日の晩カップラーメン食べたな。いやいやそんなのバレるわけないし。いや、もしかして心の中を読まれたのか?んなわけあるか!そんなことどうでもいい!好きな人が好きな人を殺してやる!いや、そうしたらもう人生が終わるし、、、
↕
②行動
もじもじする。考え込んで何も手につかない
↕
③気分
怒り30%、悲しみ30%、憂鬱30%、心配10%
↕
④身体
筋肉のこわばり、心臓の圧迫感、けだるさ、ときどき涙
具体例2)
無職になった時
【個人間相互作用・状況】
無職で貯金もほとんどない。アパート生活
↕
【個人内相互作用】
➀認知
もうダメだ。ここから立て直しなんかきかない。一生日雇いのバイト生活になってしまうかもしれない。家賃滞納したらどうしよう。食費も削らなきゃ。エアコンはつけないようにしなきゃ。どうやって生きていこう。ああぽっくり死ねないかな。もう人生に疲れた。
↕
②行動
何もしない。
↕
③気分
憂鬱90%、心配10%
↕
④身体
頭がぼーっとする、猛烈に締め付けられる感じ、ときどき涙
ここでおろそかにしていはいけないのが、認知機能の特性と体質
実はこれが問題の原因だったりもします
認知機能の特性
IQがどれくらいの水準なのか、言語理解・記憶・知覚・処理速度の能力はそれぞれどのくらいでどんな傾向があるのかをなんとなくでも捉えておく。一番はWAISという心理検査を受けるとかしてみるといい。
具体例)
言語理解
国語とか作文は苦手だったし知識もない。言語理解ダメかも
記憶力
昔から物覚えが悪いって言われてた。約束も忘れるし怒られてばっかり。記憶力もダメかも
知覚能力
図とか捉えるの苦手。立体図とか何?なんか買ったときとか説明書とか見ないとなんにも分かんない。道にもよく迷う。地図見ても分かんないし。知覚能力もダメかも
処理速度
作業とか板書のスピードとか遅いし、映画とか見てても展開についていけない。戦場カメラマンくらいゆっくり話してくれないと分かんないし。処理速度も遅いかも
体質
言わずもがなですが疲れたらどこに症状が出やすいとか知っておきます
⇩⇩⇩
具体例のように、ある状況をモデルで捉えてみました
ここからひとつ視点を増やします
コーピングスタイルを捉える
コーピングスタイル
ストレス状況下である一定の対処をする傾向
上記のようなストレス状況でいるのはつらいので、人は誰しもその状況に対処しようとします
そこで、自分がしているストレス対処の方法に関してまとめていきます
【埋め合わせ戦略】
ネガティブな媒介信念とかスキーマに気づいて表面化してしまうとつらい為、それを防ぐためになかば無意識に取ってしまう戦略
具体例)
人から期待されてる以上のことしたり承認を得られることをする。自分のネガティブな感情は感じないようにして、戦略を立てて失敗しないように行動するなど
【行動的対処】
ストレス発散のためにする行動
具体例)
お酒、カラオケ、運動、大人の遊び、映画、音楽、お風呂など
【認知的対処】
ストレス発散、解決、忘れるためにあれこれ考える
具体例)
相手を批判、自己擁護、相手の立場になって考える、視点を変えてみるなど
【他者や環境からのサポートや資源】
相談する、居心地のいい場所がある、助けてくれる人がいるか
具体例)
友人、医師、カウンセラー、本、薬
⇩ ⇩ ⇩
ここまで来たら心の奥のダンジョンに潜っていきます
2. 心のダンジョン探索 地下1階層
自動思考に関して捉えていく
自動思考
ある特定の場面において自動的に(なかば無意識に)湧いてくる思考・イメージのこと
具体例)
私は自動販売機を見ると自動的におつりの取り忘れがないかなと考えて実際におつりが出る部分を見てしまいます。周りにばれないように。
まずはその自動思考を捉えられるようになるのが大事
⇩⇩⇩
ここからさらに1段階深く潜っていきます
3.心のダンジョン探索 地下2階層
媒介信念を捉える
媒介信念
思い込みとか、自分の中で定めているルール、心の構え
自分の思い込みに気づくのはなかなか難しい。だけど段階に沿って徹底的にモデルで捉えていけば見えるものが必ず出てくる
具体例)
小さい頃、サングラスをかけている人は悪い人だと思っていました。名探偵コナンの影響です。もちろん成長とともにその思い込みの間違いに気づきました
⇩⇩⇩
ここからさらにさらに1段階深く潜っていきます
4.心のダンジョン探索 地下3階層
中核信念(スキーマ)を捉える
中核信念(スキーマ)
自分の心の核になっている信念。数ある経験から積み重ねられた価値観や教え
具体例)
人からされて嫌なことは自分もしないという信念があります。でも、よくよく振り返ると、イライラしてたり、相手が攻撃してきたらやり返したり、リア充を妬ましく思ったり、信念を破ってしまうことはいくらでもありました。その度に信念を破ってしまった自分への罪悪感が生まれてきます
⇩ ⇩ ⇩
モデルに沿って掘り下げて考えてきたものをちゃんと目に見える形でまとめます
5.心のダンジョンからの帰還 報酬をもらう
表とかにまとめる
表とかにまとめて、表面化・見える化させることで今まで気づかなかったこと、気づきたくなかったことに気づけたりします。そして、気づいたことでより良い対処方法や考え方に変えていくことができます
具体例)
【個人間相互作用・状況】
モテない。誰にも告白されない。
【個人内相互作用】
➀認知
自分の顔は上の下。なのになんでモテないの?いったいなんなんだ?みんな遠慮してるの?私はいつでもウェルカムだよ
②行動
やけ食い。上の上の人とできるだけすれ違うように生活する
③気分
困惑感20%、空虚感40%、優越感10%、劣等感も10%、リア充への嫉妬20%
④身体
力んでる、貧乏ゆすり
【自動思考】
なんでモテないの?あんなやつより私の方がいいでしょ
【行動的対処】
恋愛ドラマ観る、オシャレ雑誌見る、占い、街コン、やけ食い
【認知的対処】
みんな見る目がないと他者批判、自分は上の下なのにと自己擁護、前にも同じようなことがあったか振り返ってその時した対処がどうだったか考える
【他者や環境からのサポート】
恋愛相談に乗ってくれる友人がいる
【媒介信念(思い込み)】
私の顔は上の下
中学生の頃自分の顔が上の下くらいだと思っていました。なのにモテない。いったいなんなんだ?みんな遠慮してるの?私はいつでもウェルカムだよと思っていました。そんなある日友人から「乳くさいぱんだって中の上の顔だよね」と言われました。ディスられたのでしょうか。振り返ると、私は自分が上の下だと思って高飛車な人間になっていたからモテていなかったんだと思います
【中核信念(スキーマ)】
自分はある程度顔がいいけど欠陥がある。欠陥があるから認められない
私は小さい頃母親から「あんたわりかしきれいな顔してるよね。二重だったらアイドルになれてたんだけどね。」と何度も言われて育ちました。それで、"自分はある程度顔がいいんだけど欠陥がある。だから自分は認めてもらえない。受け入れられない"という無意識の信念が出来上がっていました
【埋め合わせ戦略】
勉強運動を頑張って先生とか友だちに褒めてもらう、アイプチ動画を見る
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これで一通りの認知と行動を捉えることができました
それぞれ相互作用があり、切っても切り離せない状態になっているためこの状態からなかなか抜けだすことができなかったのだと気づきます
具体例をもとにすると、
自分には欠陥があるから誰からも認めてもらえないというスキーマがあって、それを打ち消したくて高飛車な行動や発言をしたり、勉強やスポーツを頑張って欠陥を補償しようとしていた。あまりにがちがちで周囲からは近づきがたい存在になり誰とも付き合うことができなかった
もっと深く考えるともっといろいろな相互作用が見えてきます
⇩ ⇩ ⇩
ここまで来たらあとはスキーマや考え方、行動など変えていける部分がどこにあるのかを考えて変えていきます
自分一人でここまでできるようになってきたら、自己治療ができるようになっていきます
⇩ ⇩ ⇩
ここで、認知と行動を変えていくためのCBT2大スキルが役に立ちます
6.もらった報酬で装備を整える
1)認知再構成法
流れ
➀つらい、落ち込んでしまうような具体的状況・場面を特定
⇩
②認知・行動・気分・体調を評価して%とかで数値化
⇩
③その中で自動思考を見つける
⇩
ここまでは上の基本モデルで示した通りです。そこから、
⇩
④いくつか出た自動思考の確信度を%化
どれぐらいその自動思考を信じているか。この自動思考は90%そうだと確信しているな
⇩
⑤検討する対象となる自動思考を決める
この自動思考は何かひっかかるな。確信度は90%。この自動思考に関して検討しよう
⇩
⑥その自動思考を様々な視点から検討する
ほんとにその自動思考は信じるに値するのか?ほかにもっといい考えはないのか?
⇩
⑦新しい思考を考えて、その確信度を%化
こう考えた方がいいな。こっちの考えの方が70%信じられる
⇩
⑧もとの自動思考の変化を評価
今までの思考も間違ってはいないけど今の自分の状況には合致しない考えだな。確信度は30% に変化したな。状況によって柔軟に思考を変えていこう
というような流れで自動思考に関して検討し、より今の状況に適応的な思考に変えていきます
ここで大事なことは、認知や行動を正す、修正するのではなく、"幅を広げる"、"柔軟性を高める"ことを目的とすることです
正す、修正するというと今までの自分がまるでダメな自分だったと言われているようなものです。ダメだったのではなく、今まではその自分でいる必要があったけど、もうその自分でいる必要がなくなっただけです
ここで認知再構成法で主に使う記録表を紹介します
DTR(非機能的思考記録表)
横文字でなにやら複雑な記録表かと思いますがすごくシンプルです
外在化することで脳の負担を下げ、冷静に客観的に検討できます
➀出来事状況
②気分・感情(%)
③自動思考確信度(%)
④別の考え確信度(%)
⑤最初の自動思考の確信度(%)、変化した結果の気分・感情(%)
これを表にまとめるだけです
やり方はシンプルですが、習得にはそれなりに練習が必要です
基本モデルをしっかり理解してから始めてください
2)問題解決法
問題によりよく対処するために認知や行動の幅を広げていくスキルです
流れ
➀問題の状況・状態をより具体的に多面的に捉える
⇩
②認知や行動をより適応的・機能的に整える
⇩
③問題が解決するにはどうする必要があるのか現実的な解決状況をイメージ
⇩
④問題解決のための方法を思いつく限り挙げる
⇩
⑤考えた方法の効果と実行可能性を検討する
⇩
⑥その方法を実際に行えるよう具体的に計画する
⇩
⑦実践して効果を検証する
問題がどうなっているのか、そのためにどう認知行動を整えるのかを丁寧に検討することが大事です。そこがブレていると努力しても結果が出ずムダになるどころか自信をなくしてしまう可能性もあります
そこで、もう一つ大事なことは、問題解決法は絶対に問題を解決するためのものではなく、実行して検証するためのものという認識でいることです
トライしてみることが重要で、失敗しても次の仮説を検証すればいいだけです
3)その他の認知行動療法
マインドフルネス
リラクゼーション法
暴露反応妨害法
系統的脱感作
など
これで認知行動療法の基本モデルの説明は終わりです。けっこうシンプルですよね
自分が自分自身のカウンセラーになれるとても有効な方法だと思います
実際に試してみてください
⇩ ⇩ ⇩
ついでに認知行動療法のカウンセリングに関して書きます
カウンセリング
言葉を尊重してもらえる、別の視点で聞いてもらえることにより、気づきが得られやすくなる、自信が持てるようになるなどいろいろな良い点があります
実際のカウンセリングでは、目標を定め、どの技法が有効か定め、徹底的に理論的にモデルで捉えて、毎回の流れを構造化します
具体的には目標、時間、今回やること、次やることなどしっかり決めてやります
大雑把な構造化例)
カウンセリングは合計50分
導入(5分)
⇩
話し合う内容(アジェンダ)を設定(10分)
⇩
話し合い(30分)
⇩
まとめ、次回の予約など(5分)
大事なのは話の内容(アジェンダ)設定です
ここがブレていると当然建設的な話し合いにはなりません
内容設定は、以下のことが大事です
・双方の要望を出し相談しながら設定する
・優先順位と時間配分に意識する
・紙に書いて外在化する
・相手の理解度にしたがって徐々に相手の主体性に任せていく
ここでカウンセラーとして気を付ける事を書いていきます
双方向的・間主観的なコミュニケーション
話はしっかり聴くけど、話を聴くだけではダメ。相手を分かった気にならず、具体化・明確化し、解決策を一緒に編み出していくことが大事だと思います
具体的な手法として、ソクラテス式質問法があります
ソクラテス式質問法
相手が自問して自分で気づけるように質問する。その回答を尊重し関心をもつ
具体例)
その時何が起きてどう感じましたか
どんなことをしているとむなしいと感じますか
この1週間どんな気分になることが多かったですか
どんな環境でどんな状況でどんな人とそうなったのか、その時何を考えたか、どう行動・発言したか、気分や感情はどうだったか、体調はどうか、どれくらいその状態が続いているか、サポートしてくれる人はいるのか、ストレス対処法はどういうことをしているのか、など、環境・状況・関係者・認知・行動・心・身体に関しての質問をしていくとたいていは自然と話が深まっていきます
質問するときに大事なことは、
"ありありとイメージできるように"です
小手先の技法を駆使するよりも、これができるように意識していくことが大事だと思います
アセスメント
DSM-Ⅴなどをもとにした医学的な診断基準をしっかり参考にし、数値や尺度など目に見えるようにすると客観性が出てきます
センスがある人は感覚で掴めるものがあるかもしれませんが、自分の状態によって見えるものも変わってくるので感覚に頼ることは危険です。エビデンスをもとにしたアセスメントを行い、常に修正していくことが必要です
同様に、心理教育もエビデンスをもとにした情報を伝えること、相手の認知機能や状態に合わせた伝え方をすることが大事です。一方的に教えるのではなく、一緒に相手のトリセツをつくっていくイメージが良いかと思います
以上で認知行動療法に関してのまとめは終わりです
皆さんの参考になれば幸いです